「事実婚」で子どもができたときのために知っておきたい5つポイント
公開日 2021年3月24日 最終更新日 2021年3月27日

「事実婚」をご検討中の方から、「将来的に子どもが欲しいけど、事実婚だと何か子どもに不利益があるんじゃ…」と、不安の声が寄せられました。
そこで、今回は事実婚夫婦の間に子どもが生まれた場合の注意点や、どのようなや手続きが必要なのかについて見ていきます。
目次
(1)子どもの戸籍はどうなるの?
事実婚の夫婦の間に子どもが生まれた場合、出生届を出すことで、母親を筆頭者とする新しい戸籍が作られます。
また、生まれた子どもは非嫡出子(法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子)となります。
※以前は、嫡出子と非嫡出子とで「相続分の割合」や「戸籍の続柄の記載違い」はありましたが、法律が改正されて本記事掲載日時点でどちらも同様の扱いとなっています。
子どもは母親の戸籍に入りますが、父親の欄は空欄のままとなります。この時点では、子どもと父親との間には、法律上の親子関係は存在していません。
(2)子どもの姓はどうなるの?
生まれた子どもは、母親の姓を名乗ることになります。
ただし、「家庭裁判所に子の氏の変更許可の申立て」や「養子縁組」することで父親の姓を名乗ることも可能です。
(3)子どもの親権はどうなるの?
事実婚では、夫婦の「共同親権」が認められていないため、子どもは母親の単独親権となります。
ただし、父親が子どもを「認知」した場合、お二人が話し合って合意した上で、「親権管理権届」を役所に届け出ることで、父親を親権者と決めることもできます。
※事実婚を解消(離婚)した場合の親権はどうなるの?
法律婚の場合は、ご夫婦での話し合いか、あるいは家庭裁判所での調停・審判によって親権者が決まります。
それに対し、事実婚の場合は、それまでの単独の親権者が、事実婚を解消した後も親権者となります。
ただし、民法という法律では「子供の利益のために必要があると認める時は、家庭裁判所は親権者をもう一方の親に変更することができる」と定めてあります。
(4)手続きをしないと(法律上)父親がいないことになる?
母親は、分娩の事実で生まれた子どもとの親子関係が証明されます。
しかし、事実婚の場合、父親については「認知」という手続きをしなければ、戸籍上の父親欄は空欄となってしまいます。
①「認知」とは?
父親が子どもを”私の子です”と認める手続きのことです。これによって、父親と子どもとの間に「法律上の親子関係」が成立し、相続権や扶養義務が発生します。
②「胎児認知」とは?
認知は、子どもが母親のお腹にいるときから可能です。これを「胎児認知」と呼んでいます。
父親が病気などでいつ亡くなってしまうかわからないような場合に、胎児のうちに認知しておき、父親と子どもの親子関係を出産前にはっきりさせておくという目的のために設けられました。
②「死後認知」とは?
父親が認知をする前に亡くなってしまった場合は、亡くなってから3年以内に「死後認知」を請求する方法があります(お子さんの住所地を管轄する家庭裁判所へ訴訟を提起します)
本来であれば、父親が被告となりますが、亡くなっている場合は、代わりに検察官を被告とすることになります。
「死後認知」が認められると、お子さんが生まれた時に遡って父子関係があったこととみなされるため、お子さんにも相続権が発生します。
(5)相続はどうなるの?
もしも、父親あるいは母親が亡くなった場合に、子どもが相続人になるためには、父親・母親と子ども、それぞれの間に法律上の親子関係が存在していることが必要となります。
母親は、先述のとおり分娩の事実によって法律上の親子関係が証明されるとされています。したがって、母親が亡くなった場合、子どもは母親の相続人になることができます。
それに対し、父親は、先述のとおり「認知」という手続きをしなければ、父親と子どもとの間に法律上の親子関係を発生させることができません。したがって、父親が亡くなった場合、父親が子どもを認知していなければ、子どもは父親の相続人にはなれません。