事実婚でも慰謝料請求が認められています

公開日 2020年10月26日 最終更新日 2020年10月26日

今回は、事実婚を解消(離婚)した際の「慰謝料請求」についてお伝えします。

事実婚は、婚姻届を提出していないため、法律上の婚姻関係(法律婚)とは認められませんが、法律婚に準じた一定の法的保護を受けられるとされています。

事実婚を解消した際の「慰謝料請求」もその一つです。

 

※行政書士は、ご依頼者の代理人として相手方と交渉することができません。その他、条件面でお互いの意見が大きく異なり、離婚調停になる見込みがある場合等、お二人の間に争いがある場合には、弁護士へご相談ください。

 

「事実婚」についてはこちらをご覧ください。

「事実婚とは?」

 

(1)慰謝料とは?

損害賠償の一種で、夫(妻)が浮気や不貞行為等をしたことで夫婦関係が破綻した場合、精神的苦痛を受けた場合等に、それをお金に換算して、その損害を償うためのものです。

 

(2)事実婚を解消するには?

法律上の夫婦(婚姻届を提出している)関係の解消(離婚)のためには離婚届を提出する必要がありますが、事実婚の解消のためには特別な手続きは必要ありません。

お二人が事実婚関係を解消する意思の合致があれば、事実婚は解消されることになります。

 

(3)事実婚でも慰謝料請求が認められている

お二人が合意の上で、事実婚が解消されたのであれば問題はありませんが、どちらかが一方的に解消した場合などの以下のケースで慰謝料を請求できる可能性があります。

①事実婚関係破綻の原因を作った

法律上の夫婦の離婚では、婚姻関係の破綻原因を作った夫婦の一方に対して慰謝料を請求することができます。事実婚の解消においても、法律上の夫婦同様に慰謝料を請求することができるとされています。

例えば、「夫あるいは妻の不貞行為が原因で事実婚を解消した」「夫あるいは妻のDVやギャンブル原因で事実婚を解消した」等という場合には、破綻原因を作った側に対して慰謝料を請求することが可能になります。

 

②事実婚関係を正当な理由なく破棄した

法律上の夫婦の離婚では、お二人の話し合いで合意できない場合には「民法上の離婚原因」に該当するかどうかで離婚の成立するかが判断されます。 事実婚の解消においては、特別な手続きをする必要がないため、どちらか一方の意思で事実婚を解消できてしまいます。

しかし、事実婚(内縁)は、婚姻に準ずる関係とされているため、一方的に事実婚を解消した場合、その責任が問われます。

事実婚にも、この「民法上の離婚原因」が準用され、「民法上の離婚原因」に該当しない場合に、一方的に事実婚を解消をすると、「事実婚関係を正当な理由なく破棄した」として慰謝料請求の対象となり得ます。

【民法上の離婚原因】民法第770条

1、配偶者に不貞な行為があったとき。
2、配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3、配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
4、配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5、その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

 

(4)慰謝料請求するために

お二人が事実婚関係であったことを証明しなければなりません。

事実婚として法的な保護が受けられるのは、事実婚関係が成立しているからです。
「同棲しているだけ」では夫婦としての扱いを受けられず、慰謝料を請求することができません。

あらためて、「事実婚」とは、婚姻届を提出していないため、法律上の婚姻関係とは認められませんが、夫婦の共同生活の実態において夫婦と認められる関係のことです。

事実婚と認められるためには、以下の2つの成立要件を満たす必要があるとされています。

 

①ふたりの間に「婚姻意思」があること

社会的に「夫婦」としての関係性を作る意思とされています。「私たちは夫婦」という意識があるか、と言い換えてもいいでしょう。

 

②それに基づいた共同生活を営んでいること

「婚姻意思」に基づき、ふたりが同居して夫婦としての実体がある生活をおくっていることです。何年以上の共同生活をすれば事実婚が認められるといった明確な基準は特にありません。

それに対し、「同棲」は「婚姻の意思」を持たないで、同居している関係を指します。婚姻届けを届け出ていないという点では、「事実婚」と同じですが、同居している理由に違いがあります。

 

(5)「事実婚」を証明する方法

法律婚であれば、お二人が夫婦であることの証明は、戸籍や住民票など公的な書類等を確認することで、容易に証明することができます。それに対し、事実婚は、対外的に証明することが難しい関係でもあります。

事実婚の場合は、以下の材料(一例)を揃えることで、「事実婚であること」の事実を証明することとなります
(すべて揃える必要はありませんが、複数の材料を揃えることで証明されやすくなります)。

①「事実婚契約書」を取り交わしている

お互いが婚姻の意思を持ち、それに基づいた共同生活をすることに合意し、夫婦間でのより具体的な権利と義務、約束事を確認する手続きとして、事実婚契約書を作成します。

上記のことも、もちろん大切ですが、私が考えるもっと大切なことは、事実婚契約書の作成を通じて「お二人の仲がより深まる」ことです。

これから生活を共にする、あるいはすでに共にしている場合でも将来のことやお互いの想いや価値観等、必然的に真剣に向き合ったり、考えたりする時間となります。

事実婚は、法律婚と違って婚姻届の提出も必要がないので、事実婚関係が解消となってしまっても、いわゆるバツはつきません。
もしかしたら気持ちの面でどこか希薄になりがち関係が、事実婚なのかもしれません。

そこで、「事実婚契約書」を作成することで、お二人の決意や覚悟にもなります。
そして、生涯を共にするお二人の生活の指針にもなります。

私は、「事実婚契約書」は「事実婚の婚姻届」だと考えております。

「事実婚契約書」の詳細はこちら

②住民票における記載(続柄の欄に「妻(未届)」などの記載がある)

住民票とは、「家族構成や住所等の居住関係を公的に証明する書類」のことです。

住民票の届出は、事実婚カップルを実践していることが証明できる、貴重な公的書類となるので、大切な手続きとなります。

 

「事実婚における住民票の記載」の詳細はこちら
その他の「事実婚の証明材料」についてはこちら

 

(6)まとめ

いかがでしたか?

事実婚は、法律婚に準じた一定の法的保護を受けられるとされており、事実婚を解消(離婚)した際の「慰謝料請求」も認められています。

そのためには、事実婚関係であったことの証明が大切なポイントとなります。

また、慰謝料の取り決めをする際は、口頭での約束だけでは後々のトラブルになりかねません。それを防ぐために、取り決めた内容を「内縁関係解消協議書」(離婚協議書)に残しておくことがオススメです。

 

 

 

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