「自筆証書遺言」って?
公開日 2020年9月7日 最終更新日 2020年9月7日

遺言書には、主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つの方式があります。
今回は、「自筆証書遺言」の特徴やメリット、デメリット、さらには令和2年7月10日にスタートした「自筆証書遺言の保管制度」についてお伝えします。
目次
(1)「自筆証書遺言」とは!?
「自筆証書遺言」とは、遺言者(遺言を遺す人)一人だけでも作ることができる、最も簡単な遺言書です。
また、紙とペンさえあれば、いつでもどこでも作成できるため、手軽に作成することが可能です。
ただし、読んで字の如く、遺言書の内容は必ず自筆でなければならず、パソコン等で作成したものは無効となります。
(2019年1月13日から施行された改正相続法により、財産目録についてはを自筆以外の方法で作成可能となりました)
(2)書き方のルールってあるの?
以下の通り、法律で定められた方式が存在します。
①全文を遺言者が自筆で書くこと
遺言書の用紙等に決まりはありませんが、内容については全文を遺言者本人が自筆で書かなればなりません。
ただし、財産目録については、2019年1月13日から施行された改正相続法により、自筆以外の方法で作成可能となりました。
②作成した日付を記載すること
たとえば、「令和2年9月吉日」といった記載をした場合、遺言書は無効となってしまいます。
必ず「令和2年9月7日」等、正確な日付を記載しましょう。
③遺言者本人が署名押印すること
遺言者本人の署名と押印がない遺言書は無効となります。
なお、印鑑は認印でも構いませんが、遺言の信憑性を高めるためにも「実印」を使用しましょう。
④加筆や修正、削除にも方式に従うこと
加筆や修正などがある場合も一定の方式に従って行わなければ、遺言書が無効となる恐れがあります。
このような場合は、遺言書を一旦破棄し、新たに書き直すことが安心確実です。
(3)メリットは?
①紙とペンさえあれば、いつでもどこでも書ける
自分一人で作成可能なため、思い立ったときにいつでも書くことができます。
②いつでも内容を変更することができる
後々、遺言書の内容を変更したい場合であっても、自分の好きなときに新しく遺言書を作成することができます。
③遺言書の内容と存在を秘密にできる
自分の死後、相続人が遺言書を確認するときまで、遺言書の存在を秘密にしておくことも可能です。自分の意向を相続人が確認する時まで秘密にしておきたいと思う方にとっては、最適な方式です。
(4)デメリットは?
①方式に不備があると無効になる
先述のとおり、書き方には一定のルールがあります。
その方式に沿って作成されていない場合、遺言書の内容自体が無効となってしまいます。
②遺言書が発見されない恐れがある
遺言の内容と存在を秘密にしておけるメリットがある反面、遺言を残しているのかが不明な場合、死後発見されず、遺言の内容を実現できないというリスクもあります。
③偽造や紛失の可能性がある
自宅等で自筆証書遺言を保管される場合、内容を偽造されたり、勝手に破棄されるという可能性も考えられます。
ただし、後述する「自筆証書遺言の保管制度」を利用可能することで回避可能となります。
④家庭裁判所で「検認」を受ける必要がある
遺言者が亡くなった後、遺言書を発見した場合(勝手に開封はNG)は、家庭裁判所へ遺言書を持っていき、遺言書が法律的に有効なものか、偽造されていないかなどを確認する「検認」という手続きが必要となります。従って、遺言書の内容を確認するまで、時間と手間が掛かるため、相続手続きの開始までも時間が掛かってしまいます。
(5)「自筆証書遺言保管制度」とは?
令和2年7月10日にスタートした制度で、法務局に自筆証書遺言書の保管を申請することができるようになりました。
(この制度を利用するかは、任意となります)
これにより、先述のデメリットに記載した「方式不備による遺言書無効の恐れ(専門家が内容を確認するため)」「偽造や紛失の恐れ(公的機関に保管されるため)」がなくなります。また、遺言者が亡くなった後の「検認」の手続きも不要になるため、スムーズに相続手続きを開始することもできます。
ただし、保管申請には、手数料3,900円が必要となります。
詳細は、法務局のホームページをご覧ください。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html
(6)まとめ
いかがでしたか?
自筆証書遺言は、手軽に書くことができる反面、デメリットが多いことも特徴です。そして、そのデメリットを補完してくれるのが「法務局での保管制度」です。まだ開始されて間もないですが、今後益々の利用が期待されています。
ただし、保管申請の際に、方式に不備がないかどうかは確認してもらえますが、遺言の内容自体のチェックはしません。内容については、あくまでも自己責任となります。
行政書士などの専門家にご相談の上、遺言書を作成することで、より安心確実な内容の遺言を遺すことが可能となります。
当事務所でも「自筆証書遺言」の作成サポートをしておりますが、公正証書遺言をよりオススメしております。
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