「事実婚」の成立要件とは?

「事実婚」とは、婚姻届を届け出ていないため、法律上の夫婦とは認められませんが、夫婦の共同生活の実態において夫婦と認められるような関係のことです。
学説・判例上は、以下の2点を成立要件としています。
(1)お二人の間に婚姻の意思があること
(2)その婚姻の意思に基づいた共同生活の実体があること
それでは、ひとつずつ解説していきます。
(1)婚姻の意思があること
婚姻の意思とは、「社会的に夫婦としての関係性を作る意思」とされています。
「私たちは夫婦」という意識があるか、と言い換えてもいいでしょう。
また、夫婦と言える共同生活が一定期間継続していれば、認められやすいと言えます。
その他、
・結婚式を挙げていること
・生計が同一であること
・お二人の間に子どもがいること
・親族や友人等に妻(又は夫)と紹介していること
・一方の住民票を「妻(未届)」あるいは「夫(未届)」として提出していること
・健康保険の被扶養者として届け出ていること
等の事実があれば、認められやすいでしょう。
(2)共同生活の実体があること
一般的には、「婚姻の意思」に基づき、同居の期間が一定期間継続していれば、共同生活の実体があると認定されます。
何年以上の共同生活をすれば事実婚が認定されるといった明確な基準はありません。
逆に同居の期間が短い場合や同居していない場合について、その事実が認定されるのかという点が問題になってきます。これについては、個々の事情を鑑みて、判断されることになります。
判例では、「婚姻の意思」が強固に認められる場合(結婚式を挙げたり、新婚旅行にも行ったり等)において、同居生活を始めて2週間程で相手方が事故死してしまい、残された女性が喪主として葬儀を執り行ったという事案について、内縁の成立を認め、加害者に対して、慰謝料及び損害賠償の支払いを命じています(千葉地裁佐倉支部判昭和49.7.15)。
※判例…過去の裁判例。類似の事件について、ある裁判所が下した判断が同一のまたは他の裁判所が後に判断するに当たって参考にしたり、弁護士や当事者本人が裁判の予測をたてるにあたって、重要な資料となる。