「相続」と「遺贈」の違い
公開日 2019年2月22日 最終更新日 2019年7月29日

遺言書の内容に
「相続させる」や「遺贈する」という文言を用いることがあります。
どちらも遺言者が亡くなった場合、特定の相続人が財産を取得するという意味合いは似ていますが、違いもあります。
(1)「相続」
人が亡くなると、その人(被相続人)が生前に有していた財産は、その人と一定の関係にある人に移転します。このことを「相続」といい、一定の関係にある人のことを法定相続人(配偶者、子、父母、兄弟姉妹)といいます。
特定の財産を、特定の相続人に「相続させる」内容の遺言があった場合、原則として遺産分割方法の指定とされます。従って、相続の開始と同時に遺産分割の必要がなく、当然にその財産を取得するとされています。
ただし、「相続させる」相手は、法定相続人に限られ、それ以外の者に「相続させる」内容の遺言することはできません。
(2)「遺贈」
遺言によって財産を無償で譲ることを「遺贈」いいます。
譲る相手(「受遺者」といいます)に特に制限はありません。従って、「相続」とは違い、法定相続人に対してもそれ以外の人や団体に対しても遺言書に「遺贈する」と書くことができます。
(3)まとめ
遺言書では、特定の法定相続人に財産をあげたい場合は「相続させる」と書きますが、法定相続人以外の人に財産を残したい場合は「遺贈する」と書きます。この「相続させる」と「遺贈する」では、実際にその遺言書を使って相続手続きを行う際に大きな違いが出てきます。
では、具体的に、銀行や不動産の名義変更等の手続きで比較してみます。
「相続させる」場合
遺言書で指定された相続人の署名捺印、印鑑証明書等が必要です。
「遺贈する」場合
受遺者以外の法定相続全員の署名捺印、印鑑証明書等も必要です。
「遺贈する」場合、その受遺者以外の法定相続人全員にも署名押印をもらう必要がありますので、時間と手間が掛かる場合があります。
もし、相続人間で争いが起きてしまった場合には、他の相続人から協力が得られず手続きがスムーズに進まない恐れもあります。
「遺贈する」内容の遺言書を書く場合、「遺言執行者」を指定しましょう。「遺言執行者」とは、遺言書の内容通りに手続きを進める人のことです。これを指定することで、相続手続き全般において遺言執行者のみで手続きを進めることができます。
上記に例においては、遺言執行者がいる場合は、遺言執行者と受遺者が共同で登記申請できますので、他の相続人の協力なくして進めることができます。
一方、「相続させる」内容の遺言の場合、指定された相続人が単独で所有権移転の登記申請をすることができますので、スムーズに手続きを進めることができます。
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